私は新美南吉の作品が大好きです。とりわけ、この『てぶくろをかいに』は、動物と人間のあったかい愛でつつまれた、ほっこりとした感じが伝わってきて、とっても好きです。母ぎつねが、かわいいこぎつねにひとりで町へ行かせる時の気持ちを思うと、胸がいたくなります。そして最後に、「ほんとうににんげんは、いいものかしら。ほんとうににんげんは、いいものかしら。」とつぶやくところは、私の脳裡にこびりついてはなれません。 動物の親子の愛も、人間同様、すばらしいものです。いえ、動物の方が、もっと深くて純粋かもしれません。動物は子別れの時がくると、親はいやというほど子供をいためつけて、ひとり立ちさせるとききますが、その時の親の愛は、どんなにか深いものでしょう。 私はこの絵本の制作にあたり、こぎつねはどこまでもむじゃきで明るく、そして、純粋でこわいもの知らずのかわいいこ、としての表現を心がけました。しかし、こぎつねをこよなく愛し、また、人間のおそろしさを知っている故に複雑な、母ぎつねの表情は、むずかしく、未熟な私にはとても描ききれるものではありません。私にできることは、ただ、この親子に精一杯の愛をそそぎ、ひと筆、ひと筆、心をこめて描き込むことだけでした。 |
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てぶくろをかいに |
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出版社: |
白泉社 |
著者: |
新美南吉/作 いもとようこ/絵 |
初版年月日: |
1993年10月 |
サイズ: |
31p 31cm |
価格: |
1428円(税込) |
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