私が「ごんぎつね」に最初に出会ったのは電車の中でした。電車の揺れるたびに動く文字を読みにくいなあと感じながら追っていくうち、いつのまにか、どんどん話のなかにひきこまれていきました。そして最後の行まできたとき、どっとこみあげてくる思いと涙で、頭をあげることもできず下車駅までずっとうつむいたままだったことを今も忘れることができません。それから何度このお話を読んだことでしょう。最後の「青い煙がまだつつ口から細く出ていました。」というところは、なんと余韻を残すことばでしょう。それはなんともやりきれない運命の悲劇を感じさせます。 この作品に出会って以来、いつか私も「ごんぎつね」を描きたいと思いつづけてきました。でもいつも「今はまだ描けない、描いてはいけない、私などが触れてはいけない!」 __この作品はそんな崇高さをずうっと感じさせてきました。今回「ごんぎつね」を描かせていただくにあたり、正直いってこの気持ちは消えていません。 あまりにも多くの人に読まれ愛されている「ごんぎつね」、それ故にそれぞれのイメージがあると思います。でも、どれもみなそれぞれほんとうの「ごんぎつね」なのではないでしょうか。 私にとってこれほど描きたくて、描きたくなかった作品はありません。 ・・・・みなさんのごんと兵十に愛をこめて・・・・ |
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ごんぎつね |
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出版社: |
白泉社 |
著者: |
新美南吉/作 いもとようこ/絵 |
初版年月日: |
1985年12月 |
サイズ: |
39p 31cm |
価格: |
1365円(税込) |
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